出典:リアルアンサーズ15号

かつてのようにA〜B地点間の輸送だけでは、十分な競争力や収益力が確保できない現在、輸送に付加した価値こそが、競争力と収益の源泉となっています。
中でも「サービス業化」は、高収益なトラック輸送ビジネス復活の切り札であり、付加価値化とサービス業化は、ほとんどイコールと言っても過言ではないでしょう。
顧客志向・顧客最優先の理念による業務再設計、サービスに対する社員の意識改革、現場力の最大限化、CSR(企業の社会的責任)を意識した、共感を呼ぶパフォーマンスおよびコミュニケーションの拡大。
いま、サービス業化に関しては、多くのキーワードがあふれています。
そこで、今回の特集は、物流ビジネスの大きなうねりとして定着しつつある「サービス業化」を取り上げ、識者や現場の声を取材した結果を踏まえて重要キーワード等を紹介し、お客さまに「運賃」以外の「満足・感動」を提供することで利益を確保し経営安定化を図るための方法論を探ります。

 
 株価の上昇基調が続き、日本経済トータルでは景気回復が期待されつつあります。しかし一方、物流・トラック輸送業
界では、なお続くデフレを背景とする荷主の事業再編に伴って、国内物流構造や地域輸送ニーズが依然として急激な変化
を見せています。
 加えて、原油高や排ガス環境規制などコストアップ要因を抱える状況の中、トラック輸送業界では、数年前からの二極化が、全国レベルで静かに広がっています。
 収支バランスが好転せず経営基盤が次第に弱っていく企業がある一方で、増収増益を続け、設備投資や事業開拓にも熱心な「勢いのある」「チャレンジ精神にあふれた」企業も数多く現れてきました。
 そうした企業のほとんどは、事業の将来を見据え、過去の業容業態にこだわらず、利益率の低い業務から縮小・撤退し、利益率の高い業務領域を拡大・開拓していく「縮拡」を、リスク管理しながら断行しています。
 また、こうした企業の多くは、顧客視点に基づく提案あるいはソリューション営業を進め、現場重視に基づくオペレーション能力およびコスト圧縮能力を高めて、顧客満足と信頼を得て受注を拡大しています。
 こうした成長・高収益企業のバックにある経営ノウハウとして、もうひとつ忘れてならないのは「サービス業化」という時代の流れです。
 荷主のニーズにも自社の経営効率化にも見合っていない単純輸送から脱却し、付加価値の高い輸送を行っていくうえで、さらに「お客さまの成長と共に業務を進化・深化させ、自社も成長する」という理念を実行していくうえでも、サービス業化は避けて通れない道です。

 
 顧客満足や信頼度の向上にダイレクトに結びつくのがサービスであり、いま、そのサービスの「質」の違いが、輸送企業の競争力・収益力に大きな差を生んでいます。
 リコーロジスティクスの菅田勝さん(同社・経営管理本部副本部長)によると、リコーグループでは元リコー会長の浜田さんが20年以上前に「お役立ち精神」というキーワードを掲げ「お客さまが喜ぶ仕事をして会社を強く長続きさせよう」と説いたそうです。いまCSR(企業の社会的責任:こちらを参照)という考え方が流行していますが、CSRと欧米流の経営理論や戦略より現場を動かす「サービス」の原理が強みにつながる。「お役立ち精神」の目指すところは同じ、と菅田さんは話します。
 「物流・ロジスティクス企業におけるCSRの根本は4つあると考えています。それは、第1に安全・無事故、第2に接
客・顧客満足、第3が環境、そして4番目は現場力、つまりラストアンカーとしてのドライバーです」
 サービス業化、CSR、現場力。この3つには、密接な関係があるようです。発着の両荷主に対する顧客接点から考えてみても、トラックの運転、物流拠点での荷積み、店舗や一般家庭での積み下ろし納品作業、顧客からの問い合わせやクレームへの対応など、日々行われている現場業務そのものが顧客サービスであり、CSRを高める活動だと言えます。
 サービスは、企業風土と密接に結びついた社内の行動原理でもあります。日本文化を根底で共有している企業どうしだからこそ、キメ細かな点まで配慮したサービス業務が設計・実行できます。
 そこにあるのは、欧米から輸入された経営理論や事業戦略ではなく、現場を重視した「お客さまのお役に立つ」という発想です。成長・高収益企業は、どこかで、この「お客さまのお役に立つ」発想を具現化しており、それは従業員が現場を自律的に運営していくための指針ともなっています。
 例えば、わが国において超優良企業と評価されているトヨタ、セブンイレブン、花王などでは、現場で働く人々の「目の
輝きが違う」と言われます。
 現場を動かす人々に「すべてはお客さまの役に立ち、お客さまに満足していただくために」というサービスの行動原理があるからこそ、現場が活性化し、ムダ・ムラを徹底的に省くことができ、高収益構造へと向かっているのではないでしょうか。


 輸送はサービスである。われわれは物流サービス企業にほかならない。これは、現在トラック事業者の方々のほとんどが口にする言葉ですが、はたしていつ頃から、それが当たり前となったのでしょうか。少し過去を振り返ってみましょう。
 かつて、トラック輸送業は、「運送」に100%の商品価値がありました。荷主の荷物を指定場所へ指定時間のうちに運ぶだけで、ビジネスが成り立っていました。物が豊富だった高度成長期は、事故なく遅延なく荷崩れなく納品できれば良しとされる時代でした。
 しかし、オイルショック後、企業が経営効率化に目を向け内部物流のアウトソーシング化を進めると、事故・遅延・荷崩れのないのは当たり前となりました。また、高収益なトラック輸送に惹かれて新規参入が相次ぐと、輸送業者間の競争は激しくなり、運賃の値下げ競争も始まりました。
 こうして「運送」+「サービス」の時代が訪れました。荷主はより高度なサービスを求め、輸送事業者は企業存続のために新たなサービス開発に乗り出しました。ヤマト運輸が「宅急便」サービスを開始したのは1976年。企業相手のチャーター輸送が常識だった時代に、一般家庭を対象として混載・低料金・翌日配送・丁寧な接客を「売り」に、新たなマーケットを創り上げました。トラック輸送業界も、「積みあわせ・混載輸送」「共同配送」「一貫輸送」など新たなサービスで、荷主に対応するようになりました。また、この時期、リロケーション※の一般化や若者単身者による都市圏移動の多頻度化を背景に、引越サービスが成長したのも見逃せません。

※リロケーション:
転勤などで一定期間自宅を留守にする際、その期間だけに限って留守宅を賃貸管理する業務形態のこと。
 
 


【特集】
「サービス業」はどこが違うのか?
そもそもサービスとは何か?
「サービス業化」は、時代の必然か?
サービス向上のためのキーワード「ユーザビリティ」/「現場力」
【ケーススタディ】
株式会社アップル/・エビス運輸株式会社/・株式会社タムラコーポレーション
【サービス業の基礎としてCSRはなぜ必要なのか?】
リコーロジスティクス株式会社/株式会社トーマツ環境品質研究所/
CSRを理解するためのQ&A

【総論】
「サービス業化」。安全・丁寧・確実という普遍の追求こそが、新たな時代を築く。