![]() |
| |
| 設立:昭和62年/従業員数:150名/保有車輌:約135台/本社:長野県上田市/下城洋司 代表取締役 |
| 地元・信州の代表的な果物である「りんご」にちなんで、誰からも愛される企業になろうと名付けられたアップル運輸。 創立当初から、全国ネットの大手引越業者や大手特積業者と業務請負や配送契約を結び、長野県内の「輸配送サービス」を事業の柱として年々成長を続けている企業です。 同社の下城代表は、十代の頃から家業であった青果商や運輸業を手伝い、ビジネス経験を積んできました。二十代は長距離トラックを運転して全国へ青果を運び、三十代前半は関連事業として展開していたガソリンスタンドの経営全般を任されました。 こうした様々な経験をするなかで下城代表は、常に「運ぶこと」というのはいったい何だろう、と考え続けていた、といいます。そしてあるときひとつの答えに辿り着き、家業から独立してこの会社をつくりました。 「創業時に"心を売ろう"という経営理念をつくりました。ただ言われた通りに運ぶのではなく、心が伝わる仕事をしようと思ったのです。従業員には、かつてのわたしのように仕事に疑問を持ちながら働いて欲しくなかったので、顧客重視サービスに集中できるよう、人材教育や環境整備をしてきました」。 同社の独特の社風に触れた時、下城代表のこの思いが脈々と受け継がれてきたことを実感することができます。 |
なかでも、3番目のツーマン業務が、他社にないサービスとして特に目を引きます。これは、同社が独自に開発し「ツーマンライナー」とネーミングした輸配送サービス。その名の通り、ドライバーと助手の2人体制とし、運んだ荷を納品先の一般家庭・オフィスでクルマから下ろし、顧客の指定位置に据え付けます。一般的に二人乗務による業務は、荷主にとってはコスト高、運送企業にとってもエリアによっては採算のあわなくなる場合も生じ、敬遠されますが、大型家具、中重量のオフィス用機器、中〜大型の家電品など2人でしか運べない荷はたくさんあります。同社ではそうした荷を集め積み合わせ配送するシステムを構築することで、十分に採算のとれる業務として確立。5年前のサービス開始以降、家電量販店やネット販売の家具ショップなど複数の安定顧客を得て、着実に収益を伸ばし、社業の柱の一つに成長しました。 「このサービスは、弊社が創業以来培って来た引越輸送のノウハウを基に、われわれ社員が意見を出し合って商品化したものです。挨拶・服装・身だしなみ・ハキハキとした受け答え・テキパキとした行動。こうしたノウハウやスキルを引越業務の現場で身に付けたスタッフがいたからこそ、荷主に代わってエンドユーザーの家庭に入るサービスが認めて戴けたのだと思います」(営業部・ツーマンライナー担当 関口課長) ツーマンライナーの営業範囲は、長野県と山梨県。料金は、エリアで4段階、荷の大きさで7段階に分けられています。「一般家庭向けのツーマン業務は、土日に集中稼動します。例えば、土日に注文された家具がメーカーから届いたら配送拠点にプールしておき、翌週の土日になって、エリア別に積み合わせて配送。目標としているのは、1日1台7軒のお届けです。月〜金は、会社へのオフィス用機器の配送が多くなり、一般家庭向け配送と組み合わせることで、車輌の稼動状況を平準化することも可能になります。このようにして一般的には採算を採るのが難しいと思われるツーマン業務で、十分な利益を生み出すことができるようになりました」(関口課長) |
しかしそれを言葉通りに実現させるためには、サービス立ち上げに関わった従業員の高い参加意識が必要になります。従業員のモチベーションを高め続けることに、不断の努力を続けてきた同社にはそうなるための基盤が備わっていました。 例えば、引越・地場配送・ツーマンとサービスごとに事業担当者を決めて責任を明確にしたり、営業所の所長には「所長ではなく社長になったと思って経営してください」と権限委譲。すべての従業員が、実感をもって仕事に取り組むことのできる場を用意することで築かれた、同社の揺るぎない基盤。 「1日に扱う仕事の量を増やすことは、経営効率を高める上でもちろん重要です。しかし私は、サービスの質を高めることこそ、お客さま(荷主・お届け先)に好印象を持たれ、次も選んで戴くために最も重要だと信じています。そのためには現場でお客様に相対する従業員がただ要領良く仕事をこなすのではなく、常に最善の方法を考えるという姿勢を忘れないことこそが重要なのです」(下城代表)。 |
| 「走ることが仕事」という意識が当たり前だった物流業・輸送業から、「実輸送+顧客コミュニケーションを重視した付加価値」の輸配送サービス業へ。同社の方向性は明確です。現在の社訓は「明るく逞しく、士の群れとなれ」。この「士」とは、サービスや運転に関するプロフェッショナル(士)という意味です。 このスローガンを同社内に浸透させる役割を果たしているのが、本社はじめ全営業所で行っている朝礼。大きな声で互いに挨拶し、気合いを入れて業務指示をし、報告やスピーチで自分の考えを整理し人前で話す。こうした訓練を積むことによって、着々と「士」が育っています。 「朝礼は、弊社の文化です。これは、部下とのコミュニケーションの場であり、人材育成の重要な場として、経営にも欠かせないものになっています」(市川 司 同社取締役社長) 長野県下のデベロッパー等と連携し、新築マンションの一斉入居をサポートする引越サービスや、入荷・入庫・出庫・配達完了データを一元管理し、発着荷主がインターネット上から荷物状況をリアルタイムで照会できるシステム構築など、顧客サービスの質を高める独自の活動を継続する同社。その実践経営は、収益力と競争力を高めるサービスを継続するためには、 現場の人材を丹念に育て、サービスの質にこだわり続けることの大切さを雄弁に物語っています。 |
| 【特集】 ・「サービス業」はどこが違うのか? ・そもそもサービスとは何か? ・「サービス業化」は、時代の必然か? ・サービス向上のためのキーワード「ユーザビリティ」/「現場力」 【ケーススタディ】 ・株式会社アップル/・エビス運輸株式会社/・株式会社タムラコーポレーション 【サービス業の基礎としてCSRはなぜ必要なのか?】 ・リコーロジスティクス株式会社/株式会社トーマツ環境品質研究所/ ・CSRを理解するためのQ&A 【総論】 ・「サービス業化」。安全・丁寧・確実という普遍の追求こそが、新たな時代を築く。 |