創立:昭和23年/従業員数:52名/保有車輌:約45台/本社:兵庫県神戸市/戎義弘 代表取締役社長
 
 エビス運送株式会社は兵庫県・明石地区にある本社のほか、県内の物流センター拠点、東京および大阪の営業拠点、さらに自前で130坪のリサイクルショップを保有する企業です。
 3つに大別される同社の業務は、第1に、「リクエスト特急便」と名付けられた、中小ロット積合わせチャーター便をはじめとする一般貨物輸送サービス。第2に、在庫管理・流通加工・納品代行等を行う物流アウトソーシング・サービス。第3に、ハトのマークで知られる引越専門サービスです。
 「物流サービス業の使命は、荷主と同じ気持ちでこうした商品・財産に接することにある」。戎社長の掲げるこの理念に基づいて、多種多彩な荷物に対して、荷主の気持ちになって丁寧に接することを現場に徹底し、多くの顧客と信頼関係を築いています。

 
 
 「もし、自分で買った液晶テレビやDVD録画機だったら、大切なモノだから、最初から最後まで丁寧に扱うはずだろう?君らが毎日扱っている荷物は、荷主さんにとっては、それと同じものなんだ」。
 常日頃から、若いドライバーにこう語りかけ、サービスの基本姿勢を説いていると
いう戎社長は、3代目。
 「先代までは、運送屋のレベルとして堅実で順調な経営」を続けてきましたが、9年前にトップを交代すると「わが社は物流サービス業」と経営方針を明確にし、次々と新基軸を打ち出しています。
 「高校生・大学生の頃は、引越の手伝いをよくやりました。繁忙期は学校の休みの日はすべて仕事のスケジュールで埋められました。大変でしたが、この時の引越し業務の経験が、サービス業化の原点になっているのかもしれません。コンピュータ業界で働いた後、28歳で家業に戻り、再びドライバーからやり直しました」
 先代の時は、大手路線業者の地場配達代行もしていましたが、配送先の企業(着荷主)に信頼され、出荷も任されることに。こうして物流アウトソーシング業務を受託するようになったのは、20年前。その後、大手業者が自前でターミナルを整備し配送代行が不要になっても、企業存続に影響はありませんでした。
 戎社長に代替わりしてから、新たにサービス展開したのが「リクエスト特急便」。
 建築資材などのいわゆる「長尺もの」や中小ロット貨物、ノン梱包品など路線便には適合せず、かといってチャーター便では割高になってしまうような貨物は、利用者にとって悩みの種。複数荷主から、こうした荷物ばかりを集めて積合わせ、チャーター便として定期運行し、利用者の不便を解決しようというのがそのサービス。料金は、通常チャーター便より安く路線便より高い設定で、独自の輸送商品として、同社ホームページ上でも広く訴求し、新規顧客も増え続けてます。時間指定できるので、とくに原材料などの生産財関連の輸送として、好評だそうです。


 
 
 物流サービスに不可欠なものについて伺うと、戎社長は即座に「挨拶です」と答えられました。
 「挨拶の基本ができていないと、サービス業は成り立たないと思います。実は、ひとことで挨拶といってもレベルがあるんですが、サービス業のプロとしての挨拶は、一般レベルの挨と異なったものでなければなりません」。
 挨拶のレベルを具体的に示すと右の図のようになります。
 「目指すは、レベル5」とのことで、このレベルに到達すれば、物流サービスの質も確実に向上するといいます。なぜなら、顧客それぞれ・現場それぞれに即した柔軟・的確・迅速な対応ができるようになるからであり、現場力のアップにもつながるからです。
「プロのサービス精神が育ったならば、物流ノウハウは、その後からついてきます。私は、それでいいと考えています。レベルの高い挨拶ができて、プロのサービス精神が育つまでは”あきらめない・言い訳しない・安易に妥協しない“という3つを守る、ということを鉄則にしています」。

「リクエスト特急便」を広くアピールする同社のサイト


 
 
「リクエスト特急便」の集荷・配送車 多様な貨物を扱うため、安全への配慮も不可欠
配送センターの整理が行き届いていることも、作業品質の維持につながる重要な条件 配送センターの積み込みスペースの大きな屋根。従業員が作業しやすい環境づくりにも十二分に配慮されている
 そしてもうひとつ、引越しサービス独特の作業環境から培われた大切なことがあるといいます。「いつも見られている、ということです。作業の一部始終を見られているというのは、非常に緊張感が伴います。でも逆に考えれば、”どれだけプロであるか、お客さまに見せることができる“ということでもあるんです。特に、引越業務のような場合は、ある意味でショーのような要素も入ってきます。現場で家具等を荷づくりし、移転先で荷ほどき・搬入する。一連の作業を無駄なく美しくこなせば、お客さまに”さすがプロはちがうねえ“と、信頼感をもっていただけます」(戎社長)。
 一般貨物の場合でも、こうした経験が活きて、ドライバーは物流現場にゴミが落ちていたら率先して拾うなど、細かな気配りをし、運んでいない時も常に仕事をするのが当たり前になった、といいます。多様なお客様の多様な荷物を取扱う「リクエスト特急便」も、こうした従業員の配慮の行き届いたオペレーションがあってこそ、高い信頼性が培われ、輸送商品として確固たる地位を築いたといえるでしょう。
 「私たちが目指しているのは、お客様に“満足”だけででなく“感動”していただく仕事です」(戎社長)。
 すべての従業員が〈レベル5〉を目指し、企業は「顧客満足」のさらに上を目指す。企業と従業員が、ともに高く掲げた志しによって、この企業の現場力は、今後もさらなる高度化を進めていくにちがいありません。
 同社の軌跡を振り返れば、欧米流の企戦略による「一足飛びな」変化や成長というものには無縁です。一貫して貫いてきたのは「お客様の気持ちになって荷を運ぶ」という、その信念に他なりません。いきなり結果を期待するのではなく、常にあるべき姿を追求することで、同社の現場力は「熟成」され、揺るぎない信頼を作り出す。その結果、より高いレベルのサービスを要求され、それに対しても同じ姿勢で応えていくと、さらに幅広いノウハウが蓄積され
てゆく。
 同社の物流サービス業への見事な転身は、こうした良い循環を回しつづけた結果として、もたらされた「必然」ともいえるのではないでしょうか。


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