設立:昭和51年/従業員数:約50名/保有車輌:約50台/本社:神奈川県川崎市/代表取締役 田村 隆
 
 タウン情報の発信、商業施設の販売促進、人材募集など、地域経済の活性化に貢献しているフリーペーパー(無料情報誌)は、現在ビジネスとして大きく伸びている分野です。(株)タムラコーポレーションは、そのフリーペーパーの流通業務において、数千箇所に上る配付先へ効率よく、しかもきめ細かく配慮しながら配送するサービスを確立。荷主から高い評価を得ています。
 同社の田村社長は、全国的に名の知られているファーストフード店の店長、「赤帽」の個人事業主を経て、独自のサービス哲学をもつ物流サービス企業を設立しました。地域および顧客に密着したサービスポリシーを貫き、「モノを運ぶのはおマケ、つまり付加部分でもいい。お客様のニーズに応じたサービスで価値と利益を創り出したい」という逆転の発想で、ここ数年は順調に売上を伸ばしています。

 
   若い時から独立ビジネス志向だった田村社長が、貯金300万円を元手に脱サラし、赤帽「田村運送店」を川崎市の自宅で始めたのは、1976年。
 「NHKテレビで”新商売“として紹介されていた赤帽をたまたま知って、神奈川県内で第1号として開業。レストランを開こうと思っていたので、運送業界に入るとは考えもしませんでした(笑)。当時、料金は荷物1km走行あたり120円、荷扱い労力費が15分まで400円という時代でしたが、半年で壁つきあたりました」。
 そこで、田村社長は、便利屋サービスの発想を取り入れ、単にモノを運ぶだけでなく、弁当配送なら弁当詰めのサービスをしたり、引越なら梱包や掃除も行なうなど、輸送の周辺業務を取り込んで、顧客を徐々に増やす戦略に転換。
 こうしてサービス業化の道が見えてきた時期に、雑誌配送の仕事を受注。独自のサービス姿勢が短期間のうちに高い評価を受けて、情報誌配送も受注しました。これに対応するために神奈川県内の全域をカバーする業務体制を確立し、経営基盤を確かなものとしました。


 
 
 「服のイージーオーダーのように、個々のお客さまに合わせ、輸送と関連業務を組み合わせたサービス提供をするのが、当社の仕事」と田村社長が話す通り、同社はキメ細かな提案営業とミスのない丁寧な配送業務の実践をモットーとしています。
 田村社長は、従業員が増えるにつれて自身が実践してきた安全・丁寧な業務を徹底するために左のような全社一丸となった活動をはじめました。活動のメニューは幅広く、徹底的に掘り下げて結果に結び付ける内容となっており、通常行なっている安全活動の他に、社員1人当り年間10万円の安全教育対策費を投じているといいます。
 さらにこの活動は、経営・管理者層やドライバーだけにとどまらず、事務職など一般社員も含めての全員一丸となっ取り組みが基本とされており、今後は社内だけではなく、協力会社にまで広げていく予定だそうです。
 こうして同社のサービス業としての基盤は、サービスを提供する「人」への投資を積極的に行ない、人的資産を最大限に活用することで、築かれてきました。
 「人」の可能性を引き出すという面では、同社にはもうひとつ独自の方法論があります。それは地元在住の女性たちの活用です。
 神奈川県全域を中心とした同社の配送業務は、なかなかハードですが、それを担う同社の協力ドライバー(軽トラック中心)は、個人事業主を含めて約250人。その2/3を、女性が占めています。
 「女性ならではの心配りやソフトな挨拶応対は、当社サービスの大きな強み。顧客満足度を高める重要なポイントとなっています。しかも、土地勘があるので配送効率も高められます。
 最初はドライバーとして仕事を始め、仕事に慣れ意欲を見せる人には、積極的に独立開業を支援しています。ここ2〜3年で独立し専属アウトソーシング先として活躍している女性は100人以上にのぼっています」(田村社長)
 期待以上の成果を上げたことに対する荷主からの評価は高く、「事故やミス、クレームのない安全品質の高い配送サービス企業」として、大手メーカーなどから表彰されています。


 
 
膨大な部数のフリーペーパーが日々めまぐるしく搬入され、出荷されていく 「地域密着型ビジネス」のキメ細かい配送を担う車輌
「ミスなし配送」を実現する第一歩となる拠点での積み込み さりげなく「ありがとうございます」の言葉が
あしらわれたユニフォーム
 フリーペーパー・雑誌の配送サービスが大きな売上を占めるようになった同社ですが、その傍らで自治体・図書館・病院など公共性の高い荷主や、半導体製造メーカーなどからの輸送業務も、数多く請負っています。また、最近では、関東一円に店鋪展開を進めるホームセンターの物流支援サービスにも注力しています。
 「ありがとうに心を込めて、共に働き、共に成長し、共に幸せになる。これが、当社のめざす理念です。
 お客さまと一緒に成長拡大していく方針を実践するため、お客さまごとにスーパーバイザーを任命し、より接点を密にしました。
 また、人的資源の管理を重点化するため人事部を独立させるなど組織変革も進めているほか、本年12月、川崎駅前に本社オフィスを移転させ、マネジメントの機動力をより高めよう考えています。私が個々の現場を訪ねる機会も、より多くなるはずです」(田村社長)
 本年4月には、「10年後の上場をめざす」と新聞取材で発表をした同社。組織づくや、福祉物流やフードビジネスへの参入を柱とする新規の経営展開など、将来に向けた経営環境の整備を進めています。
 お客様それぞれとの密接なコミュニケーション。そしてどんな業務にも最高の品質と最適な効率を追求する姿勢によって、次から次へと「信頼」を拡大していく同社。サービス業として確固たる地位を築くには、常に顧客の要望を掴み提案する姿勢と同時に、「現場オペレーションの完成度」にこだわり続けることこそ重要なのかもしれません。


【特集】
「サービス業」はどこが違うのか?
そもそもサービスとは何か?
「サービス業化」は、時代の必然か?
サービス向上のためのキーワード「ユーザビリティ」/「現場力」
【ケーススタディ】
株式会社アップル/・エビス運輸株式会社/・株式会社タムラコーポレーション
【サービス業の基礎としてCSRはなぜ必要なのか?】
リコーロジスティクス株式会社/株式会社トーマツ環境品質研究所/
CSRを理解するためのQ&A

【総論】
「サービス業化」。安全・丁寧・確実という普遍の追求こそが、新たな時代を築く。