三和運送有限会社
昭和41年創業/社員数15名/保有車輌13台
/本社 栃木県矢板市
関谷 忠泉 代表取締役社長

   単に荷を運ぶだけの業務から、荷主の物流合理化への提案業務、付加価値の高いサービス業務へ。トラック輸送企業の実現すべき課題であるこの「物流合理化の提案」を、20年も前に行い、業務効率、収益率の向上だけでなく、より高いレベルの安全運行を実現した企業があります。それが、栃木県矢板市に本社を構える三和運送有限会社です。同社の主な業務は、養鶏場・養豚場への飼料輸送ならびに管理業務。もともとは、飼料メーカーの工場から依頼を受け農場へ輸送するだけでしたが、そこで発見したのが、荷主の物流システムに潜むムダ。同社は、ゆとりと安全運行を確保するため、このムダと対決したのです。


 「安全はトラック輸送にとって基本中の基本。そして、お客様に信頼されるのは、高い安全性があってこそ。「金」に代えられない貴重な信頼を守るため、コストや知恵を使って安全を確保すべきなのは企業の責務です。企業規模の大小は無関係。どうです、違いますか?」と語る、同社の関谷社長。(社)栃木県トラック協会の会長をはじめ、健保組合連合会栃木連合会長など公的な要職にあり、その激務の間を縫って取材に応じていただきました。
 話は、いまから20年前のこと。飼料工場は荷の積み込み時間が指定されており、あちこちから集まって来たトラックが工場の入り口で待たされていました。この積み荷待ちロスを取り戻すため、養鶏場までの輸送にムリが生じ、ひいては事故の可能性が高くなる、という悪循環があったそうです。
「飼料工場は24時間製造しているのだから、24時間出荷できる体制にすれば積み荷待ちロスはなくなる。輸送時間も短縮できる。何よりもドライバーにゆとりが生まれ安全性が高まる」と思い至った関谷社長は、同社がトータルな物流管理を行うことを、飼料工場と養鶏場の双方に提案しました。まず、養鶏場にある飼料タンクの在庫管理を受託。タンク内を清掃し、飼料を投入し、つねに過不足ない量だけタンク在庫があるように、飼料工場へ発注をかける付帯業務を行う契約を結びました。
 飼料工場に対しては、適切な量を適切な時間に用意してもらえるよう発注を早めに行うとともに、それまで20kg入り袋だった飼料の荷姿を、梱包せずにトラックにそのまま積み込むシステムに変えました。この提案で、養鶏場は飼料管理の人員削減、飼料工場は計画的な生産と荷待ちトラック台数の減少、三和運送はゆとりある運行計画による事故低減が可能になりました。同社の物流提案が、三方一両得の結果を生んだのです。

 
 同社で運行管理責任者をされている中村 洋一さんは、現在の業務について、こう語ります。
「茨城県鹿島の飼料工場で夜間に荷を積み、栃木県下の農場へ朝9〜10時に届けます。現在、工場への発注は、インターネットを利用し、飼料の種類と入庫時間を指定して2日前に行っています。当社では、県内産の生鮮野菜を東京大田市場などに輸送する業務もありますが、往復で7時間を超える輸送経路を設けていません。長距離輸送に比べドライバーへの負担が軽くできるし、週40時間労働も法制化前から導入済みです。つまり、安全は、当社の業務システムの根本となっています」
 安全輸送は企業の責務、という同社の経営方針を反映した、ゆとり運行。これが、ドライバーのひとりひとりが安全運転に集中できる大きな要因となっています。同社ではドライバーの定着率が高いというのも、なるほどと頷けます。


 1羽1日100〜120gの飼料が必要な養鶏。食の時間が1度でも遅れると、数週間も卵を生まなくなることもあるそうです。しかも、同社の着荷主は数十万羽を飼っている大規模農場のため、飼料が届かないでは済まされません。飼料管理業務を受託した大きな責任を負っていることから、同社では毎日の車輌整備・点検、タイヤ管理を特に入念に行っています。
「ドライバーによく話すのは、着荷主の経営者になったつもりで仕事をするようにということ。自分が鶏や豚を飼って利益を上げている立場を本当に理解して事故ゼロをめざすのが、プロの仕事。だから、車輌整備やタイヤ管理は当り前。トラックそのものも、自分が使う食器やコップと思って洗車を徹底するよう指示します」(関谷社長)
遅延だけでなく、飼料には、病気の発生事故への配慮も不可欠。社長の言葉にあるように、車輌の衛生面には徹底した管理を行っています。その結果同社では、創業以来1度たりとも伝染病などは起こしていないそうです。
 そのほか、同社の交通安全への取り組みは、長年にわたり「地域と共に」を基本としています。
「安全は、社員が全員で確保維持するもの。会社の中でひとりだけ良い、ということはあり得ない。同じように、地域社会と共生するトラック輸送の安全は、わが社だ
とはあり得ない。同じように、地域社会と共生するトラック輸送の安全は、わが社だけが完全であれば良いというものではない。地域社会の見本を示せるのが、本当のプロドライバー」(関谷社長)
 この考えに基づき、同社はトラック協会や警察と協力し、地元の小学校・中学校の生徒に交通安全の啓発をはかる「児童交通安全教室」にも積極的に参加しています。







積み荷への配慮ばかりでなく、徹底した洗車はドライバーの基本姿勢としている

資料をバラ積みできる専用車輌


 


 ゆとりある運行とともに、ドライバーにただ運ぶだけでなく、全体の流れのなかで自分の仕事の重要性を認識でき、さらに地域社会の見本となることのできるプロとしての意識づけを行い、揺るぎない安全性を確立した三和運送(有)。関谷社長はこの企業風土を守り続けるために、ドライバーとのコミュニケーションを最も大切にしています。超多忙の日々を過ごされる中で、ただ顔を合わせたら声を掛けるといったことだけではなく、時間を見つけては社員の自宅へわざわざ食事の時間に出向き、一緒に食事をしながら、社員や家族の本音の話を聞くと同時に、その生活状況を把握して、常に気配りができるようにしているそうです。
 「去年は賞与を3回支給できた」という同社は、今後も事業拡大には着手せず、これまでの事業を掘り下げていく方針です。かつて様々な工夫をしてきたように、これからも時代に合わせて、新たな発想をしながら、この飼料輸送の業務においては他社の追随を許さない、高度な輸送品質を確立していくこと、それが同社の独自のスタイルとして今後も継続されていくにちがいありません。
この企業の取組みは、「新しい仕事を取る」ことだけが、企業の発展を約束するものではなく、ひとつの仕事をとことん追求し、その仕事を「生まれ変わらせる」ことも、「新たなビジネス」を創造することと同じ価値を持つということを教えてくれます。そして同時に、そこには単なる合理化、効率化といった成果に直結する目的だけでなく、どんなことがあっても「安全」を優先順位の一番上に据え続ける、輸送企業としての「気概」や「誇り」が不可欠であることを雄弁に物語っているのではないでしょうか。


【特集】
「安全」が仕事をとってくる
リスクマネージメントで危険を回避し企業体力の増強を図る。
安全という品質向上に欠かせない「社員満足度」の達成。
【ケーススタディ】
アサヒロジスティクス株式会社 /
三和運送有限会社/新宮運送株式会社
【総論】
安全という原点にこそ、大きな可能性が眠っている。